総覧、カメラ編、レトロゲーム編、古着編に続いて、シリーズ5本目はフィギュア・おもちゃです。
きっかけは送料の話をしていたときだった。おもちゃは箱がでかい。仕入れで得た利益が送料で溶けるジャンルの筆頭だという印象があって、正直あまり触っていなかった。でも実測してみたら、印象と数字がずれているブランドがいくつも出てきた。
条件はいつも通り。日本所在セラー・中古限定・過去90日のTerapeak実測(2026年9月7日)。月販売数は90日合計を3で割った数字。売却率(Sell-through)は出品数に対して何%売れたかで、そのままだとピンとこないので1個売るのに必要な出品数(売却率の逆数)も並べた。数が小さいほど早く売れる。
フィギュアブランド別に見る売却率
| ブランド | 月販売数 | 売却率 | 1個売るのに必要な出品数 | セラー数 | 平均落札単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| Kaiyodo | 331個 | 2.93% | 34個 | 196人 | $89 |
| Bandai Tamashii S.H.Figuarts | 30個 | 2.66% | 38個 | 39人 | $136 |
| Max Factory Figma | 206個 | 2.66% | 38個 | 97人 | $94 |
| Square Enix Play Arts Kai | 35個 | 2.80% | 36個 | 42人 | $167 |
| Sega Prize Figure | 41個 | 2.35% | 43個 | 48人 | $65 |
| Alter | 85個 | 2.07% | 48個 | 70人 | $136 |
| Good Smile Nendoroid | 369個 | 1.81% | 55個 | 151人 | $92 |
| Kotobukiya | 273個 | 1.27% | 79個 | 210人 | $150 |
| Takara Tomy | 739個 | 0.76% | 132個 | 448人 | $73 |
| Bandai Gunpla | 26個 | 0.75% | 133個 | 35人 | $114 |
| Medicom Bearbrick | 28個 | 0.44% | 227個 | 15人 | $65 |
数だけならBanpresto(847個/月)が頭一つ抜けているけれど、526人が既に群がっている市場なので表からは外した。見てほしいのは真ん中あたりの塊で、Square Enix Play Arts KaiとBandai Tamashii S.H.Figuartsはセラーが40人前後しかいないのに売却率が2.6〜2.8%と高い。同じジャンルの中では、ここが手薄なまま回っている棚だ。
逆にMedicom Bearbrickは注意した方がいい。セラー15人と少ないから空いて見えるけれど、売却率0.44%は表の中で最下位。空いているのは、単に誰も欲しがっていないからという可能性がある。「セラーが少ない」だけを見て仕入れると、この手の罠を踏む。
Kaiyodoの中身は食玩じゃなかった
Kaiyodoの売却率2.93%はブランド別で最高だった。中身を見るために、実際に売れた50件をURLごと開いてみた。
| 種類 | 件数(50件中) | 単価帯 |
|---|---|---|
| Amazing Yamaguchi(マーベル版Revoltech) | 11件 | $150〜$297 |
| Revoltech Yamaguchi(アニメ・ゲーム系) | 17件 | $31〜$279 |
| Fraulein Revoltech(綾波レイ系) | 5件 | $37〜$137 |
| Sci-Fi Revoltech(怪獣系) | 3件 | $75〜$79 |
| 食玩・カプセルトイ | 11件 | $5〜$14 |
| その他 | 3件 | $49〜$77 |
Kaiyodoと聞くと食玩(チョコエッグの動物とか)を思い浮かべる人が多いと思うけれど、実際に単価を引っ張っているのはRevoltechの可動フィギュア、特にSpider-ManやWolverine、Batmanといったマーベルキャラのライセンス版だった。平均単価$89というブランド全体の数字は、$200超のマーベル版と$5〜10の食玩を足して2で割ったような値で、実態は主力商品と客寄せ商品がはっきり分かれている。
特撮・変形玩具は今回いちばん意外だった
| ジャンル | 月販売数 | 売却率 | 1個売るのに必要な出品数 | セラー数 | 平均単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 仮面ライダー 変身ベルト | 25個 | 3.97% | 25個 | 36人 | $139 |
| スーパー戦隊 DX | 39個 | 3.65% | 27個 | 36人 | $182 |
| Transformers | 87個 | 2.39% | 42個 | 83人 | $170 |
| Zoids | 99個 | 1.92% | 52個 | 100人 | $123 |
| Beyblade | 111個 | 1.84% | 54個 | 91人 | $83 |
| 超合金 | 194個 | 1.42% | 70個 | 136人 | $208 |
| Bakugan | 9個 | 1.01% | 99個 | 14人 | $228 |
| ゴジラ ソフビ | 21個 | 0.71% | 141個 | 21人 | $163 |
| プラレール | 134個 | 0.62% | 161個 | 89人 | $77 |
| ウルトラマン ソフビ | 19個 | 0.38% | 263個 | 27人 | $69 |
| トミカ | 324個 | 0.29% | 345個 | 145人 | $54 |
仮面ライダーの変身ベルトとスーパー戦隊のDX玩具、この2つの売却率が今回調べた全ジャンルの中で最も高かった。デニムもパンプスもアパレルも含めて、この日にTerapeakで数えた中では一番だ。セラー36人という規模も、アパレルの人気ブランドと比べると薄い。
ただし3.97%という平均のうしろで、中身はバラバラだった。eBayのSold検索を変身ベルトで1件ずつ開くと、最新作の「Kamen Rider MYTH DX MY-TH Driver」は出品からわずか3日で完売し、在庫は最後の1点だった。一方で旧作の「Kamen Rider Diend DX Super Best」は、売れるまで549日かかっている。同じ「変身ベルト」というくくりでも、現行放送中のシリーズと旧作コレクター品ではまるで別の市場だ。この「何日で売れたか」はSold検索の各出品ページに出ているが、FOX RECONを入れておけばメルカリの商品ページを見ている時点で同じ数字が出る。
Bakuganは価格帯が$8.90〜$3,594.99と開きすぎていて、この数字はまだ信用していない。レア玉が平均を吊り上げている可能性が高いので、参入するなら実際の落札履歴を1件ずつ見てから判断した方がいい。トミカとウルトラマンソフビは、セラー数と売却率の組み合わせから見て供給過多か需要不足のどちらかで、今回はどちらも避けたいジャンルに入れている。
送料でジャンルが分かれる、ただし数字の読み方に注意
特撮の数字を見て気づいたのは、変身ベルトとスーパー戦隊DXの平均単価が近い(仮面ライダー$139、戦隊$182)のに、平均送料は倍以上違うことだった。
| ジャンル | 平均送料(買い手への請求額) |
|---|---|
| トミカ | $9.30 |
| プラレール | $16.64 |
| Sega プライズフィギュア | $17.42 |
| Good Smile Nendoroid | $17.79 |
| ウルトラマン ソフビ | $20.01 |
| Max Factory Figma | $18.67 |
| 仮面ライダー変身ベルト | $22.61 |
| Bandai Tamashii S.H.Figuarts | $22.89 |
| ゴジラ ソフビ | $23.51 |
| Square Enix Play Arts Kai | $27.70 |
| 超合金 | $32.86 |
| スーパー戦隊DX | $46.45 |
先に断っておくと、この表はTerapeakが出品ページから拾った買い手に請求した送料であって、セラーが実際にEMSやDHLに払っている金額ではない。送料を安く見せて商品価格に上乗せしているセラーも混ざっているはずなので、実際の発送コストはこの数字より高いと見た方がいい。特にスーパー戦隊DXのような大箱は、実重量より箱の体積で送料が決まる国際便の仕組み上、この表以上に利益を圧迫している可能性がある。
もう一つ、この表には関税が入っていない。米国向けは対日関税が2026年7月24日から12.5%(301条)になっていて、$167のPlay Arts Kaiなら関税だけで約$21、$208の超合金なら約$26が上乗せされる計算になる。送料と関税を両方乗せると、単価の高いジャンルほど手元に残る利益は表の数字より薄くなる。
自分の肌感だと、この箱サイズのクーリエ実勢は50ドル前後が目安になる。仮にスーパー戦隊DXを例に仮組みすると、こうなる。
- 落札価格: $182
- 買い手からの送料受取: $46
- 実際の発送コスト(クーリエ実勢): 約$50 → この時点で送料単体が$4の持ち出し
- 関税12.5%(申告額ベース): 約$23
送料と関税だけで$182の取扱高から約$27が消える計算になる。ここに仕入原価とeBayの販売手数料はまだ乗っていない。表の平均送料$46.45を見て「思ったより安い」と判断するのは早い。実際に出す前に、自分が使うクーリエの見積もりを一度取ってから仕入れ判断をしてほしい。全体の利益構造は3万円売れて手元に残るのは6,692円だった記事にまとめている。
変身ベルトと戦隊DXの箱のサイズ差自体は動かないので、仮面ライダーの変身ベルトは戦隊よりひとまわり箱が小さいぶん、送料の実額でも有利な方だとは思う。ただしその「有利」も、正確な発送コストと関税を自分で一度計算してから信じてほしい。
大きい商品を避けるなら、Nendoroid・Figma・S.H.Figuartsあたりの手のひらサイズのフィギュアが現実的な選択肢になる。理由は3つでなく2つでいい。箱が小さいぶん請求送料も$17〜23の範囲に収まっていて実コストとの差が開きにくいこと、そして型番と状態がはっきりしているので相場を調べやすいことだ。
ただし小さいから関税を免れるわけではない。関税12.5%は箱のサイズでなく落札価格にかかるので、$94のFigmaでも約$12は乗る。「小さい=送料が安い」で「小さい=手数料も安い」まで思い込まないほうがいい。特にS.H.Figuartsはセラー39人とまだ薄いので、送料・関税を織り込んだ上で初心者が最初に触るジャンルとしては悪くない。
この先のシリーズ
総覧は市場地図の記事へ。回転率で仕入れ判断をしたい人は初心者こそ回転率を見る記事も合わせて読んでほしい。
(開示:この実測データは箱らぼ運営者が自分のリサーチ用に作ったものです。売却率・セラー数の数え方の詳細はSold検索の調べ方の記事にまとめています)
