メルカリやヤフオクで仕入れて売る場合、古物商許可を取った時点で古物台帳(帳簿)の記帳義務がついてきます(そもそも許可が必要かどうかは古物商許可と税の記事にまとめました)。ところがフリマの取引画面には、法律が求める項目のいくつかが最初から載っていません。ここが実務で一番つまずくところです。
この記事では、①古物台帳に何を書く義務があるのか ②フリマ仕入れではどこまで書けるのか ③それを自動で作る方法(自作のChrome拡張「フリマ帳票くん」)——の順にまとめます。
なぜ自分でこの拡張を作ることにしたのか(税理士3人と契約して分かったこと)は、前の記事に書いています。
古物台帳とは — 法定の記載事項と保存期間
古物営業法で記帳が求められている項目は、次の5つです。
| 記載事項 | フリマ仕入れで取れるか |
|---|---|
| 取引の年月日 | ○ 取引画面に出る |
| 古物の品目・数量 | ○ 商品名と個数 |
| 古物の特徴 | ○ 商品説明・型番など |
| 相手方の住所・氏名・職業・年齢 | × 出品者名しか分からない |
| 相手方の確認方法 | △ プラットフォームの本人確認に依存 |
保存期間は、最終の記載をした日から3年間です。電子データで持つ場合も、直ちに書面で表示できる状態にしておく必要があります。
1万円未満の取引は、原則として記帳義務がありません。 ただし盗品が流れやすい品目は例外で、金額にかかわらず記帳義務があります。
- 書籍
- CD・DVDなどの光ディスク
- ゲームソフト
- 自動二輪車・原動機付自転車とその部品
- (2025年10月1日から)電線・エアコン室外機などの金属類
レトロゲームや古本をフリマで仕入れている人は、300円の仕入れでも1件ずつ記帳が必要ということです。ここを知らずに「1万円未満だから不要」で運用している人は、けっこう多いと思います。
フリマでは書けない欄を、どうするか
上の表のとおり、フリマ取引では相手方の住所・職業・年齢が構造的に取得できません。うちの拡張は、この欄を空欄にもせず、それらしい値で埋めもせず、「取得不能(フリマ取引)」と明記して出力します。書けないものを書けたように見せかけるほうが、後で問題になると考えているからです。
そのうえで、相手方を特定できる情報は漏らさず残す形にしています。
- 取引ID(
mercari:m1658…形式・税務帳票の取引ID列と同じ値)を独立した列で出力 - 相手方アカウント名とユーザーID
- 商品ページのURLと、取引画面の証憑スクリーンショット
そして台帳の末尾に、管轄警察署への確認記録(確認日・担当・回答内容)を書き込む欄を置いてあります。
というのも、非対面取引の本人確認の扱いには全国統一の基準がなく、警察署によって見解が割れるのが実情だからです。この論点の詳細と、うちが管轄署から得た回答は古物商許可と仕入税額控除の記事にまとめました。最終的な運用の可否は、必ずご自身の管轄警察署(生活安全課)にご確認ください。
できること(機能)
対応サイト: メルカリ(Shops含む)・ラクマ・ヤフオク・Yahoo!フリマ(旧PayPayフリマ)の4サイト。自分のアカウントの購入履歴だけを読み取ります。
作成されるものは3種類+証憑です。
- 税務帳票(HTML/CSV) — 支払額・購入日・出品者に加えて、インボイス経過措置の控除区分(2026年9月まで80%/10月から70%)を取引日基準で自動判定して付けます。月別小計と経過措置対象の合計つき
- 古物台帳(CSV) — 古物営業法の法定記載事項に列を揃えた形式。ゲームソフト・CD・書籍は1万円以下でも記帳義務がある品目なので、レトロゲームを扱う方は特に
- 仕入れ管理CSV — 全項目入りの生データ
- 証憑スクリーンショット — 取引画面をまるごと撮影し、
2026年/スクショ/2026-07/のような年月フォルダに「日付_金額_商品名」のファイル名で自動整理
データはすべて自分のPCの中だけに保存されます。外部サーバーへの送信はなく、アカウント登録も不要、無料です。

使い方は3ステップ
- 対象を選ぶ — ポップアップで取得範囲(全期間/直近3ヶ月/日付指定)と対象サイトにチェック
- 「記帳する」を押す — 専用タブが開いて、購入履歴を自動で巡回します。画面上部に「デバッグしています」というバーが出ますが、これは証憑スクショ撮影のための正常な表示です
- 帳票を出力 — 記帳が終わったら、年単位・月単位を選んで出力ボタン。ダウンロードフォルダの「フリマ帳票くん」に帳票とスクショが揃います
⏳ 最初の1回は、時間がかかります
ここが一番大事な注意点です。帳票くんは取引を1件ずつ実際のページで開いて、金額・日付・出品者を読み取り、その画面を証憑として撮影します。ページをめくって、スクショを撮って、ファイリングする——人間がやる作業をそのまま代行しているので、初回の全期間記帳は取引数×十数秒かかります。うちの実績だと、4サイト767件でおよそ数時間でした。
対策は2つ。
- 放置でOK。1件ごとに保存されるので、途中でPCを閉じても取得済みの分は消えません。再実行すれば続きから再開します(同じ取引を二重に記録することもありません)
- 日付指定で1年ずつ分割するのも確実です(例: 2024-01-01〜2024-12-31)
そして2回目からは新しい取引の差分だけなので、月1回の記帳は数分で終わります。「最初だけ重い、あとはワンクリック」という設計です。
⚠️ サイト側の期限——「あとでまとめて」が効かない理由
これは帳票くんの制限ではなく、フリマサイト側の仕様です。知らないと過去の証憑が物理的に取れなくなります。
- ヤフオク: 落札履歴は約120日で自動削除されます。 4ヶ月より前の落札分は、もうWeb上に存在しません。年に1回まとめて記帳しようとすると、ヤフオク分の大半が消えています
- Yahoo!フリマは、以前はWeb版の購入履歴が直近50件で打ち止めでしたが、現在は「もっと見る」で過去分も読み込める仕様に変わっています(2026年7月に実際の画面で確認し、帳票くんもボタンを自動で押して全件取得するよう対応済み)。ただ、こうしたサイト仕様は予告なく変わるのが常です
- メルカリ・ラクマは古い履歴も残っていますが、同じく表示仕様はいつ変わるか分かりません
つまり「確定申告の直前にまとめてやる」は、少なくともヤフオクでは構造的に手遅れになります。月1回の記帳を習慣にするのが、このツールの前提であり、一番の使い方です。もう消えてしまった過去分は、カード明細や銀行履歴で補完するしかありません。
その他の注意点
- 取得できなかった取引は、正直にそう出ます。 何度試しても読み取れない取引(ページ削除など)は無限に再試行せず、帳票の「取得できなかった取引」という別表に理由つきで載ります。その分だけ手入力で補完してください
- 古物台帳の住所・職業・年齢の欄は「取得不能(フリマ取引)」と明記されます。 フリマの仕様上開示されない情報を、あるように見せかけることはしません
- 記帳中は専用タブが自動で動きます。そのタブを閉じると安全に中断します(取得済み分は保存されます)
- 各サイトの画面構成変更で取得できなくなる場合があります。自分が毎月使う道具なので、壊れたら直します
免責
本ツールは取引記録の転記による記録補助です。税務上の適格性の最終確認は税理士等の専門家に、古物台帳の運用は管轄の公安委員会・行政書士等にご相談ください。

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