うちは税理士・会計法人と3社契約している。贅沢をしているわけではなく、事業が複数あるのと、正直に言えば「答え合わせ」のためだ。同じ制度、同じ帳簿の話をしても、3人の対応はきれいに割れる。
税務調査を想定したときの構え方が、まず違う。調査員の指摘をそのまま受け入れて「直しましょう」となるタイプ。逆に、過度な追及には線を引き、無駄な対応を省かせて、むしろこちらから指摘を返すタイプ。どちらが正しいという話ではない。専門家の間ですら運用が割れる世界だ、と分かったことが3社契約の一番の収穫だった。
だからこそ思う。解釈は人によって割れる。でも記録は割れない。いつ・誰から・いくらで買ったかという証憑だけが、担当が誰でも、調査官が誰でも通用する共通の土台になる。
事務コストは、静かに上がり続けている
インボイス制度で、仕入れごとの控除区分の管理が増えた。電子帳簿保存法で、ネット取引の証憑はデータで保存する義務になった。1件ずつは小さな手間だが、うちのようにフリマ仕入れが年間900件を超えると、転記と保存だけで数日が溶ける。売上に1円も貢献しない事務コストが、制度改正のたびに積み上がっていく。本音を言えば、あほらしい。
税務署の担当者に、直接聞いてみた
先日、担当の税務署の方と話す機会があったので、率直に聞いてみた。
「ネット証憑の保存、正直めんどうなんですが、意味ありますか? 事務コストしか上がらないんですが。ちゃんと揃えて提出したら、見るんですか?」
返ってきた答えは、こうだった。
「見ないですね。ただ……国が示したことですから」
現場は見ない。それでも義務は義務として残る。怒る気力も失せるくらい正直な答えで、逆にすっきりした。
付け加えると、実際の税務調査で帳簿や証憑が全件チェックされるわけでもない。中小規模の調査は実務の感覚で言えば、対象期間のうち任意の数ヶ月分を抽出して見る程度のことが多い。こちらは全取引・通年の記録を義務づけられ、向こうはサンプルしか見ない。 この非対称に付き合うために顧問料を払い、専門家を3人も雇っている。あほらしい、ともう一度言いたくなる。
「残しておいて間違いはない」——これが現実的な正解
見る・見ないで意味を測ると腹が立つ。でも証憑は保険と同じで、事故——つまり税務調査——が起きた日に初めて値段がつく。その日に「揃っています」と出せれば、仕入れの実在性の説明はそこで終わる。無ければ、そこから何日もかけて記憶と履歴を掘り起こすことになる。
それに、調査が「任意の数ヶ月の抽出」だからこそ、こちらはどの数ヶ月を抜かれても即答できる状態にしておくしかない。どこを見られるか分からないサンプル検査への唯一の防御は、結局、全期間の記録だ。皮肉なことに、あほらしい制度の構造そのものが「全部残せ」という結論を裏書きしている。3人の税理士の構え方がどれだけ違っても、「記録が揃っているに越したことはない」の一点だけは全員一致だ。
つまり結論はこうなる。現場は見ない。でも、データとして残しておいて間違いはない。 文句は言っていい。義務は消えない。なら、残すコストを限りなくゼロに近づけるしかない。
それで、自動化する道具を作った
うちの仕入れはメルカリ・ラクマ・ヤフオク・Yahoo!フリマ。この4サイトの購入履歴から、税務帳票(インボイス経過措置の控除区分つき)・古物台帳(法定項目準拠)・取引画面の証憑スクリーンショットまでを、月1回のワンクリックで自動作成するChrome拡張を作った。「フリマ帳票くん」という。

年間900件の転記に数日溶かしていた作業が、月に1回ボタンを押して放置するだけになった。データは全部自分のPCの中だけに保存される(外部送信なし・無料)。Chromeウェブストアで公開中だ。
制度には文句を言っていい。でも記録は淡々と、コストをかけずに残す。税理士3人と税務署員1人と話して辿り着いた、それが一番現実的な落とし所だ。