追記(2026年7月24日):この日から米国の対日関税が変わりました(通商法301条ベース・日本は既存関税との合計12.5%)。本記事の計算はすべて新税率12.5%に更新済みです。
結論から書きます。2025年10月にeBayが米国向けの低額輸入をDDP(関税セラー負担)に切り替えてから、送料設定は「配送の設定」ではなく「損益の設定」になりました。うちの現在の答えはこうです。
- 米国向け:送料を受け取る(売価と分離する)
- 英・独・豪など:送料込み(無料表示)
| 売価帯(米国向け) | 受け取る送料 | 関税の節約額(対 送料無料) |
|---|---|---|
| 低価格・軽量帯 | $12 | 約$1.5 |
| 〜$100(エコノミー追跡) | $20 | 約$2.5 |
| $100〜300 | $30 | 約$3.8 |
| $300〜 | $35(頭打ち) | 約$4.4 |
なぜこの形になるのか、順に説明します。
米国向けの「送料無料」は、無料ではなくなった
米国DDPの関税は商品価格に対して課されます(12.5%は2026年7月24日からの新税率で、率は品目で変わります)。送料は課税ベースに入りません。
固定側のコストは、CPaSSの請求明細を1件ずつ分解して実測しました:関税処理手数料が関税額の2.1%(公称通り・全件2.05〜2.12%)、輸入通関手数料はEconomyのみ¥245/個、DHL/FedExはほぼゼロ。よく言われる「1件$8.5」という固定費は、うちの明細のどこにもありませんでした。実態はずっと軽い。
ここから重要な帰結が出ます。総額を変えずに、売価から送料へ$1移すごとに関税が12.5¢減る。
逆に送料無料にするには、送料分を売価に埋めるしかない。売価は課税ベースなので、埋めた送料にまで12.5%の関税がかかります。
| 設定(総額$220) | 課税ベース | 関税+処理手数料(12.5%+その2.1%) |
|---|---|---|
| 送料無料 | $220 | $28.1 |
| 売価$190+送料$30 | $190 | $24.3(−$3.8) |
つまり2025年10月以降、米国向けの送料無料は「無料」ではなく、送料の12.5%を関税として払う有料の演出です。$30送料の商品を月50件売るなら、月$187。見栄えにその値段を払うかどうか、という話になりました。
先に神話を潰しておく:「送料に逃げれば手数料が減る」は誤り
昔からある俗説に「eBayの手数料は商品価格にかかるから、送料に寄せれば手数料を節約できる」というものがありますが、現在のeBayの販売手数料(FVF)は送料込みの総額に課金されます。海外決済手数料や売上受け取りの手数料も同様に総額ベース。
売価と送料の配分を変えて動くのは関税だけです。ここを正確に理解していないと、送料設計の目的を取り違えます。
うちの階段設計と、その理由
理想を言えば、送料は売価に連動して連続的に変えたい。でもeBayのシッピングポリシーは固定額しか設定できないので、階段で近似するのが現実解です。うちの階段が上の表で、設計理由は3つ:
- 実送料を下回らない:各帯の送料は、その帯の商品で実際にかかる国際送料(追跡付き)を回収できる水準に置く
- 売価が上がるほど送料比率が下がる:$100の商品で送料$30なら総額比23%、$300超で$35なら12%以下。買い手の心理的な抵抗線を越えない
- $35で頭打ち:高額品でも送料を釣り上げない。過大な送料はeBayのポリシー上も、買い手の信頼上も、申告価格の面でも踏みたくないラインです
正直ラインについて:この設計は「実送料+handlingの範囲で送料を受け取り、結果として課税ベースが適正化される」ものです。商品価値を偽って申告額を下げる行為とは別物で、そこは踏みません。
自分のポリシーを自分で採点する(85点)
正直に書くと、この設計にも弱点があります。
弱点1:低単価×送料$20の重さ。 $40の商品に送料$20は総額比33%。この帯は「送料高くない?」の離脱が出ます。対策は送料側ではなく仕入れ側——そもそもこの帯の中量級商品は扱うかどうかから考える。
弱点2:帯境界の断層。 売価$95→$105に上げると、買い手の総額は送料の帯替わりで$115→$135に跳ねます。$100〜110あたりの値付けは損な谷間で、$102で売るくらいなら$99の方が転換率で勝つことが多い。値付けのとき帯境界を意識してください。
弱点3:単一売価と国別送料の非対称。 売価は1つなのに、米国は送料別・英独豪は送料込み。米国基準で値付けすると、送料無料圏の販売はその分マージンが薄くなります。うちは主戦場の米国基準で値付けし、送料無料圏の目減りは許容コストとして扱っています。
残り15点はうちの設計ミスではなく、eBayのポリシーが固定額しか許さない制約から来るものです。逆に言えば、この階段まで組めば個人の運用としてはほぼ上限だと思っています。
関税をさらに削る、正攻法の4つ
売価と送料の配分以外にも、関税負担を下げる合法的なレバーがあります。
1. 同梱・セット販売で固定費を1回にする。 実測後に言い直すと、DDPの固定費そのものは軽い(Economyの通関手数料¥245/個、クーリエはほぼゼロ)。それでも2品を別々に送れば通関手数料も送料も2回、セットや同梱なら1回。効き目の主役は送料側ですが、低単価品ほど「1梱包にまとめる」の合計効果は大きい。バラ売りよりセット化は変わらず有効です。
2. 実際の関税率は品目で違う——請求実額と突き合わせる。 12.5%はあくまで見積もり用の目安で、実際の率は品目(関税分類)ごとに違います。うちは毎月、キャリアからの請求実額と自分の計算を突き合わせて、品目ごとの実際の負担率を把握しています。これを続けると**「関税が軽いジャンル」が見えてくる**——つまり関税率は仕入れ選定の変数になります。
3. 米国比率が低い商品は、関税の織り込みを分ける。 低価格帯など、実際には米国以外へ売れることが多い商品まで一律に関税を織り込むと、価格競争力を無駄に失います。うちは配送ポリシー単位で「関税を織り込む商品/織り込まない商品」を分けて計算しています。
4. やらないことを決めておく。 申告価格の過少申告、ギフト偽装、この類は短期的に数ドル浮いても、通関トラブル・アカウント・信用で全部返ってきます。削るのは設計で削る。ここは動かさない方が結局安い。
クーリエの送料は「読めない」——だから階段に余白を入れる
送料設計の話をするなら、送料そのものが年々読みにくくなっている現実も書いておくべきです。特にクーリエ(DHL・FedEx等)と特約系サービスを使う場合、請求額は「見た目の料金表」どおりになりません。
- 容積重量:クーリエは実重量と容積重量(縦×横×高さcm ÷ 5000)の重い方で課金します。実重量1kgでも、大きな箱なら3kg扱いで請求される。軽くてかさばる商品(フィギュアの箱、ぬいぐるみ等)は特に要注意
- 燃油サーチャージ:毎月変動し、基本運賃の2〜3割に達することもある。去年の料金表で見積もると普通に外れます
- DDPの通関・立替手数料:関税そのものとは別に、通関処理や関税立替の手数料が乗るサービスがあります
- リモートエリア追加料金:米国でも僻地宛は割増が発生
つまり送料は固定費ではなく変動費です。うちの送料階段($12/$20/$30/$35)が実費ぴったりではなく少し余白を持たせてあるのは、この変動を吸収するためでもあります。「送料設定=実費の転記」ではなく「変動する実費の保険込みの設計」と考えてください。
英独豪はなぜ送料込みでいいのか
DDU(関税は買い手負担)の国では、売価に送料を埋めてもセラー側に関税ペナルティが発生しません。だったら送料込みにして表示をシンプルにした方が、買い手の計算負担が減って売りやすい。米国と逆の結論になるのは、関税を誰が払うかが違うからです。
副次効果:送料を分けておくと守れるもの
- **値引き交渉(Best Offer)**は商品価格に対して来るので、送料分は交渉から守られる
- 買い手都合の返品では、別建ての送料は返金対象外にできるケースが多い(送料込みだと全額戻る)
- 検索の見え方:商品価格の表示が送料込みの競合より安くなるため、価格比較で先に目に入る
チェックリスト
- 米国向けポリシーは送料を受け取る形になっているか(送料無料のままなら、送料×12.5%を毎回関税で払っている)
- 送料の階段は実送料を回収できているか(燃料費・料金改定で古びていないか)
- 高額帯の送料に頭打ちを設定したか(過大送料は禁物)
- DDU圏(英独豪など)は送料込みでシンプルにしたか
- 値付けが帯境界の直上($102など)に落ちていないか
- 低単価品はセット化・同梱で固定手数料と送料を1回にできないか
- 容積重量とサーチャージ込みで送料階段に余白があるか
- 月1回、キャリア請求の実額と自分の計算を突き合わせているか
送料設計は一度組めば全出品に効く、数少ない「即効性のある」改善です。ただし前提となる利益の全体式を持っていないと、どこを直せたのかも分かりません。全体式は儲からない原因を実額で数えた記事にまとめています。