前回は、真贋鑑定の強制ラインを軸に時計8ブランドを実測しました。ロレックスの91.0%が対象、シチズンは実質0%。今回は逆側の軸です。日本の在庫に対して、実際にどれだけ売れているか。
先に結論
- 在庫回転率(90日Sold件数÷日本発Active出品数)がいちばん高い、つまりいちばん売れているのはロレックス。2.70%でした
- いちばん低いのはセイコー。0.57%で、ロレックスの4.7分の1です
- グランドセイコーの実測中に汚染を見つけました。「SEIKO Grand Quartz」という1970〜80年代の別ラインが、200件サンプルの1割弱に紛れ込んでいました
- タグ・ホイヤーはセラー数96人でいちばん分散していました。価格帯の割に競合が多い状態です
実測:日本発Active出品数と90日Sold
eBay公式のBrowse APIで日本所在セラーのActive出品数を、Terapeakで直近90日のSoldを、それぞれ腕時計カテゴリに絞って実測しました(2026年9月)。
| ブランド | Active出品数(JP所在) | セラー数 | 価格中央値 | Sold(90日) | 在庫回転率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ロレックス | 17,237件 | 40人 | $2,989.35 | 465件 | 2.70% |
| グランドセイコー | 8,362件※ | 86人※ | $1,519.99※ | 128件 | 1.53% |
| シチズン | 129,325件 | 67人 | $208.61 | 1,927件 | 1.49% |
| タグ・ホイヤー | 22,479件 | 96人 | $370.00 | 189件 | 0.84% |
| カシオ/G-SHOCK | 184,705件 | 57人 | $251.98 | 1,460件 | 0.79% |
| オメガ | 36,080件 | 91人 | $599.99 | 266件 | 0.74% |
| カルティエ | 9,019件 | 54人 | $2,798.10 | 65件 | 0.72% |
| セイコー | 265,104件 | 77人 | $151.50 | 1,500件 | 0.57% |
※グランドセイコーは汚染除去後の補正値。詳しくは後述します。
在庫回転率は、90日Soldの件数を、日本発Active出品数で割った数字です。高いほど、日本の在庫に対して実際に売れている割合が高いことになります。ただしSoldは90日の累積、Activeはある一瞬の在庫量なので、この割り算は正確な回転率ではありません。あくまで在庫の厚みに対する実需の目安として読んでください。
なお、Terapeakが画面に出す「Sell-through rate(売却率)」とは分母が違います。Terapeak側は分母に「期間中のSold+Unsold+現在のActive」を使いますが、その現在のActiveは1,000件で頭打ちになっているようで(rolex検索で実測すると常にActiveが1,000件ちょうどでした)、出品数が1,000件を超えるブランドでは分母が過小になり、実勢より高い数字が出ます。今回の在庫回転率は、日本所在セラーのActive実数(キャップなし)を分母にしているので、Terapeakの売却率とは別の指標として扱ってください。
セイコーの在庫過多
セイコーはSold自体が1,500件(90日)あります。8ブランド中2番目の多さで、絶対数としては決して売れていないわけではありません。それでもActive出品数が26万件を超えていて、在庫回転率は8ブランド中もっとも低くなりました。
同じ廉価帯のシチズンと比べると分かりやすい数字です。シチズンはActive 12.9万件に対して回転率1.49%、セイコーはActive 26.5万件に対して0.57%。出品数自体がシチズンの2倍あるうえに、売れ行きに対する在庫の相対量はさらに開いています。セイコーは型番展開が広く、同じ「SEIKO」でも当たりと外れの差が大きいブランドだと見るのが実測に近い読み方です。
ロレックスが回る理由
ロレックスは90日でSold 465件、セラー数は40人でした。高額帯にもかかわらず、8ブランド中もっとも在庫回転率が高く出ています。
前回の実測で見た通り、ロレックスはSoldの91.0%がAuthenticity Guaranteeの強制ラインを超えています。現物を持たずに出品できるブランドではありません。この記事の数字と合わせると、在庫を積む負担が大きいぶん、出しているセラーの数自体が絞られていて、その分在庫が動きやすい、という構図が見えてきます。参入障壁の高さと回転の速さが、同じ実測から裏表で出てきた形です。
グランドセイコーの汚染に学ぶこと
実測の途中で見つけた話をそのまま書きます。「Grand Seiko」で検索すると、"SEIKO Grand Quartz"という1970〜80年代の別ラインが混ざりました。グランドセイコーとは無関係の、名前が似ているだけのヴィンテージ品です。
200件サンプルのうち18件がこの汚染で、率にして1割弱でした。生の出品数(9,396件)をそのまま使うと、実際より1割ほど水増しした数字になるところでした。他の7ブランドはこの水準の汚染はなく、カルティエとロレックス、オメガ、シチズン、G-SHOCKはゼロ、セイコーとタグ・ホイヤーも1.5%以下です。キーワード検索でブランドを数えるときは、ブランドの名前が別の何かと重なっていないか、サンプルの中身を実際に開いて確認する必要があります。
仕入れの筋
数字から見える入口です。
動きの速さで選ぶならロレックスですが、在庫と資金の拘束が前提になります。ここは前回の記事の制約とセットで判断してください。
シチズンは量をさばけるタイプです。在庫回転率1.49%は廉価帯の中では高く、価格中央値$208.61という手頃さと合わせて、無在庫の枠でも回しやすい候補です。
セイコーは型番選定が肝です。在庫回転率が最も低いということは、当たりを引けば動きますが、闇雲に出すと埋もれます。過去記事の「リピートリスト」の考え方で、動いた型番を繰り返す運用が向いています。
まとめ
同じ「時計」というジャンルでも、在庫回転率はロレックスの2.70%からセイコーの0.57%まで、4.7倍の開きがありました。Authenticity Guaranteeの実測と重ねると、在庫必須で参入障壁が高いブランドほど回転が速く、無在庫で入りやすいブランドほど在庫が積み上がりやすい、という裏表の関係が見えてきます。
数字の出どころは、2026年9月のeBay公式Browse API実測(日本所在セラーのActive出品数)と、同時期のTerapeak実測(JP限定・直近90日Sold)です。相場も出品構成も動くので、仕入れる前にご自身の対象ブランドでSold検索を確認してください。
