「日本の化粧品はeBayで売れるのか」を調べようとして、最初につまずきました。eBay公式のHealth & Beautyカテゴリ検索キーワードTop100(2026年Q2)を見ても、日本ブランドが1つも入っていなかったからです。上位はダイソン・エスティローダー・ラロッシュポゼといった欧米ブランドとmedicubeなど韓国ブランドばかりでした。
そこで諦めず、ブランド名を指定してeBay Browse APIで実際の出品件数と価格を1つずつ調べました。結果、同じ「日本の化粧品」でも、ブランドによって出品件数は1,700倍以上、価格帯は6倍近く違うことが分かりました。
14ブランドの実測結果(2026年9月20日)
| ブランド | 検索母数 | 価格中央値 |
|---|---|---|
| 資生堂 | 8,839件 | $30〜35 |
| コーセー | 1,961件 | $23〜24 |
| 鐘紡(Kanebo) | 1,523件 | $24〜25 |
| SUQQU | 1,188件 | $82 |
| キャンメイク | 1,183件 | $17 |
| DHC | 611件 | $25 |
| アネッサ | 577件 | $27〜28 |
| ヒロインメイク | 406件 | $15 |
| 肌ラボ(ロート製薬) | 380件 | ― |
| ポーラ | 323件 | $45〜55 |
| ドクターシーラボ | 275件 | $88.50(最高) |
| 花王(一般) | 206件 | $22〜27 |
| ユースキン | 24件 | $22 |
| メンターム(近江兄弟社) | 5件(最小) | ― |
検索語はブランドごとに揃えていない("skincare" "cosmetics" "hand cream"等)ので厳密な横比較ではありません。表記ゆれ・セット品/サンプル品の混在・カテゴリ混在も含まれるため、この数字を「人気順」「販売実績順」と読み替えるのは危険です。あくまでリサーチの入口として見てください。ただし、それを割り引いても桁の違いは揺るがないレベルです。
発見1:色物・限定品ほど高く売れる
価格中央値が高い順に並べると、ドクターシーラボ($88.50)・SUQQU($82)・ポーラ($45〜55)が上位を占めます。3ブランドに共通するのは「限定色」「プレステージ」という性格です。
SUQQUの出品を見ると、色番号と和名(「134 Sakura Kagami」「145 Kagayakihisoka」)をそのままタイトルに使い、"Limited Edition" "Rare" "Authentic"を強調する出品が並んでいました。配送目安は3〜4週間かかる表示が多いのに、それでも売れています。日本発送の小規模セラーが多数、色ごとに分業するように出品していました。
対照的に、キャンメイク($17)・ヒロインメイク($15)はドラッグストア価格帯がそのままeBay価格になっていました。ヒロインメイクは実質「マスカラ+専用下地」の2点構成で、ライン展開せず1カテゴリを掘り下げる戦略が、そのまま出品にも表れています。
発見2:DHCだけ、個人セラーがいない
13ブランドは基本的に個人・小規模セラーの集合体でしたが、DHCだけ違いました。「dhc_usa」という単一セラー(フィードバック8,337・100%、米国拠点)が、上位30件のほぼ半数を占めていました。ブランド自身が現地法人で直接販売している構造です。
日本国内の「お試しセット」文化もそのまま輸出されていて、「(10-SETS) DHC Cleansing Oil, CoQ10 Eye Cream...」のようなサンプル詰め合わせが$44〜125で売られていました。
発見3:国内の定番ブランドほど、海外では無風
一番意外だったのがこれです。ユースキン(定番オレンジ色のパッケージで知られる国民的ハンドクリーム)の検索母数はわずか24件、メンターム(近江兄弟社)に至っては5件しかありませんでした。資生堂の8,839件と比べると、それぞれ368分の1・1,768分の1です。
さらに、ユースキンの出品内容を見ると、日本で一番売れている定番オレンジ色の「ユースキンA」(医薬部外品)はほぼ出品されておらず(24件中3件のみ)、代わりに贈答向けの香り付き「Hana」シリーズが8割を占めていました。国内の売れ筋と、越境セラーが選んで並べる商品が一致していないということです。
日本のドラッグストアにどこでも置いてある定番品だからといって、海外に需要があるとは限りません。逆に言えば、ここに需要のギャップを見つけられれば、まだ手つかずの余地がある可能性もあります。
発見4:同じセラーが複数ブランドを横断している
コーセー・鐘紡・メンタームのいずれにも、台湾拠点の「house_of_fashion.2013」(フィードバック20,331)が登場していました。全出品に「12%オフ」という同じ値引き表記が機械的に付いていて、価格改定を自動化した総合ディーラーだと考えられます。1ブランドに特化するのではなく、日本コスメというカテゴリごと横断的に扱う業態が、データにもはっきり表れていました。
VeROについて
eBay公式の認定権利者プロフィール一覧を確認しましたが、調査時点で今回の14ブランドは個別の掲載が見当たりませんでした(Chanel・Coachのような高級ファッションブランドは掲載あり)。フィードバック2万件・8千件超のセラーが何年も正規品を大量出品し続けている実態も合わせると、VeRO掲載ブランドと比べれば確認すべき追加条件は少ない可能性があります。
ただし、一覧に掲載がないことは権利侵害リスクがないことを意味しません。正規品であっても、真贋証明・商品画像や説明文の権利・並行輸入の扱い・地域別の販売制限・出品カテゴリのルールなどによって、削除や制限の対象になることはあります。仕入れ・出品の判断は自己責任で、最終的には自分の目で最新の状況を確認してください。
運営者自身の経験
この記事を書いている自分自身、ユースキンは8年前からずっと出品しているだけです。注文が入ったら、近所のカワチ薬品で買ってきて発送する。それだけの単純な仕入れです。それでも競合が少ないのは、自分でも「ウソだろ」と思うくらい意外でした。
体感として、単純な転売という土俵で比べるなら、AmazonよりeBayの方がイージーモードです。Amazonで国内卸から商品を引いて出品している人がいるなら、その一部を輸出(Amazon US、eBay、Shopeeあたり)に回した方がいいと思います。
まとめ
- 色物・限定品(SUQQU、ドクターシーラボ、ポーラ)は高単価が成立する
- ドラッグストア系(キャンメイク、ヒロインメイク)は安価な消耗品として動く
- DHCだけブランド自身が現地直販しており、個人セラーの参入余地が薄い
- 国内の定番品(ユースキン、メンターム)は海外ではむしろニッチで、需要のギャップが空いている可能性がある
次はブランドごとの深掘り(なぜSUQQUとドクターシーラボは高値が付くのか、Kateリップモンスターが値崩れしない理由など)を別記事にしていく予定です。
