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規制・安全

CPSC e-Filingが本執行に。書類を出せないまま送ったフィギュアはどうなったか

移行期間に試した実体験と、2026年7月8日以降に同じことをしてはいけない理由

最終更新 2026.08.04書いた人:箱らぼ運営(現役セラー)

本執行の前に、自分の店で試したことがあります。ソフビとフィギュアを、CPSCの証明書なしでSpeedPAKに載せて米国宛に送りました。案の定、輸送の途中でCPSC関連の書面を求める連絡が来ました。中古品でメーカーの試験データなんて用意できるはずもなく、放置。それでも荷物は止まらず、お客さんに届きました。

今、同じことをやると、たぶん荷物は戻ってきません。2026年7月8日にCPSCの電子申告(e-Filing)が本執行に入り、SpeedPAKの料金表には「目的国に配達できない場合、転送または返送されず、破棄されます」と明記されています。あのとき届いたのはセーフだったからではなく、まだ執行前だったから。この差を知らないまま同じ感覚で送り続けるのが、一番危ないと思っています。

子ども向け玩具の分類と3軸(安全・知財・通関)の守り方は、姉妹記事にまとめています → ブランド玩具を安全に輸出する:3軸チェックリスト

あのとき届いた理由

CPSCは2025年1月8日から2026年7月7日までを移行期間(自主参加フェーズ)にしていました。この期間は、申告データの不備やミスがあっても罰金・貨物ホールド・輸入者リスクスコアの悪化につながらないと明言されていたようです。

つまり自分の実験は、採点されない模試を受けていただけ。書面要求を放置しても届いたのは、運でも交渉でもなく、期間の性質でした。

2026年7月8日からの本執行

変わった点は3つです。

  • 12歳以下の子ども向け製品などを米国に入れる場合、CPC(児童製品証明書)のデータを通関前に電子申告することが義務になった
  • CPSCは約600のHTSコードを重点監視対象に指定。過去の輸入データから「半数以上が証明書必要か高リスク」と判定したコード群で、玩具はど真ん中
  • 証明書が無い・出せない・虚偽だった場合は、没収・返送・罰金・アカウントペナルティの対象

保税区域(FTZ)経由は2027年1月8日まで猶予がありますが、個人セラーの直送には関係のない話です。

実例を並べる

制度の条文より、実際に何が起きたかのほうが伝わると思うので並べます。

ダイソー:罰金$205万+対米おもちゃ輸入停止(2010年)。 鉛・フタル酸の基準超過と警告ラベル欠如で、CPSIA違反への初の民事制裁金が日本企業に落ちました。独立の安全コーディネーター常駐と全商品監査まで課されています。

港湾での一斉差し押さえ。 CBPとCPSCの合同監視で、玩具人形20万体を全米の港で差し押さえた事例があります。アルファベット玩具1,296個、中国製玩具1,500個など、1シップメント単位の没収は公表ベースだけでも途切れません。

偽Labubu 11,000体、約$51万相当(2025年8月)。 シアトル空港で押収。LEDバルブと虚偽申告されていたそうです。注目すべきは、Labubuが大人向けコレクタートイだという点。偽物は知財と安全基準の両面で刺さるので、「大人向けだから安全規制は無関係」とはならない。

日本のセラー掲示板。 おもちゃを扱っていたセラーが、CPSC対応を理由に米国販売そのものをやめた報告が出ています。撤退も選択肢のひとつ、というのが現場の空気です。

フィギュアとソフビはどっち側か

判定基準は「12歳以下の子ども向けとして設計・意図されているか」。商品そのものより、どう売られているかで決まります(16 CFR 1200.2)。

大人コレクター品と認められやすい客観要素はこのあたりです。

  • 高価格・限定生産・精巧で壊れやすい
  • 台座やディスプレイ前提の作り
  • パッケージに「対象年齢15歳以上」表記
  • 子ども向け商品の売場に並んでいない

グッスマやコトブキヤのスケールフィギュアはセーフ側。逆にポケモンやディズニーの遊べる系ソフビ・アクションフィギュアはアウト側に寄ります。人気キャラを使っているだけで自動的に子ども向け認定されるわけではない(J-Net21のQ&Aにも明記があります)ものの、売り方と表示で反対側に転びます。

ソフビにはもうひとつ弱点があって、素材がPVC+可塑剤なので、子ども向け判定された瞬間にフタル酸規制(6種)が直撃します。中古ソフビでフタル酸の試験成績書は出せません。つまり子ども向け側に落ちたら、その時点で詰みです。

SpeedPAKの今の運用

  • 2026年7月15日から、SpeedPAKの設定画面に「CPSC Doc」の事前登録欄ができ、証明書情報を登録・再利用できるようになりました。それ以前はシップメントごとにメールで送る運用だったので、書類がある人には楽になっています
  • 一方で料金表には、配達できない貨物は転送も返送もされず破棄と明記。書類が出せない商品が税関で止まった場合、商品は返ってこない前提で考えることになります

没収は罰金がなくても全損です。仕入れ値と送料と、その注文のアカウントヘルスがまとめて消えます。

HTSコードを自分で選べないという穴

もうひとつ、実際にCPaSSを使っていて引っかかっている点があります。監視は約600のHTSコード単位で行われるのに、発送時にセラーがそのコードを能動的に入力・修正できる場面が限られていることです。SpeedPAK EconomyはそもそもHSコードの入力が不要で、CPaSS側は設定したデフォルト値を注文に自動適用する仕様。自分の環境で触れるのは任意項目くらいで、この荷物をどのコードで申告するかを出荷ごとに確定させる導線が細い。

気になったので、自分のCPaSSの実注文で確かめました(2026年8月4日実測)。分かったのはこうです。

  • HSコード欄はプリセット一覧から選ぶ方式。検索はできるが、任意の10桁コードを自由入力することはできない
  • 商品ごとに推奨候補が出る。売れた充電器を開くと候補は「850440 Charger」の1件だけ。出荷済みのファミコンソフトには「9504500000」(ビデオゲーム類)が入っていた
  • 「figure」で検索すると、出てくる候補は**「950300 Figures」ただ1件**。Dolls も Models も Stuffed doll も、人形・フィギュア系の語は全部950300に束ねられている

CPaSSのHSコード欄で「figure」を検索した結果。候補は950300 Figuresの1件だけ

つまり、うちの商品は監視対象コードに当たらないはず、と自分で判断しても、出荷画面で選べる分類には最初から選択肢がほとんどない。フィギュアと名の付くものは、SpeedPAKの導線上は玩具コードでしか流せない作りです。

分類の分かれ目は実在する

コードの世界の話を補足しておくと、フィギュアの関税分類には法的にはっきりした分かれ目があります。

米国の関税分類では、玩具(HTS 9503)かどうかは遊び価値で決まります。CBPの判断基準は、ごっこ遊びや想像力の刺激、手先を動かす遊びを促すかどうか。キャラクターものであることは玩具認定の理由にならないと裁定で明言されていて、遊び要素のない観賞用のPVCフィギュアは、玩具ではなく**プラスチック製の小像・装飾品(3926.40)**に分類された実例があります。ケアベアのPVCキーホルダーが「遊び価値なし=玩具にあらず」と裁定された件などが公開されています。

9503はCPSCの重点監視コードのど真ん中、3926.40は装飾品。同じ商品でも、どちらのコードで通関に流れるかで検査の当たりやすさが変わる構造です。しかも執行初日から、監視対象コードで申告データに不備がある貨物は優先検査、ホールドは最長60日、保管料はセラー持ちという運用が予告されています。

企業はこの分かれ目で裁判までやっています。マーベルのToy Biz社は、X-Menのアクションフィギュアが「人形(人間の表現・高関税)」か「玩具(非人間・低関税)」かを連邦裁判所で争いました(ミュータントは人間ではない、という主張が通った有名な事件です)。分類ひとつで関税もリスクも変わることを、企業は昔から知っているわけです。

ただし、ここで前の節の実測結果が効いてきます。CBPの裁定上は観賞用フィギュア=3926.40がありえるのに、CPaSSのプリセット一覧に3926系のコードは存在しません(実測で「3926」はゼロ件。「statue」で出るのは陶磁器の691310と骨董の970600だけで、PVCフィギュアには使えない)。つまり個人セラーがSpeedPAKで送る限り、フィギュアは実質950300=重点監視コードで申告されます。分類での回避は、導線の時点で閉じている。

だから引き取れる教訓はひとつです。コード側で逃げられない以上、検査で開けられたときに「子ども向け製品ではない」と判定される状態を、出品の段階で作っておく。カテゴリはToysでなくCollectibles側で正しく選び、タイトルと出品文で大人コレクター品の実態(15歳以上表記、展示用、限定生産)を固めておく。それが、玩具コードで流れても止まらないための唯一の防御です。

玩具だけではない:キッチンタイマーで書類を求められた話

もうひとつ、自分の実例を足しておきます。書面要求が来たのはフィギュアだけではありません。モンスターハンターのキッチンタイマーを送ったときにも、書類の提出を求められました。

キッチンタイマーは玩具ではないし、子ども向け製品でもない。最初は理由が分からなかったのですが、調べて腑に落ちました。おそらく引き金はキャラクターではなく、中のボタン電池です。

2022年成立のReese's Law(16 CFR 1263)は、ボタン電池・コイン電池を含む消費者製品を子ども向けかどうかに関係なく規制対象にしました。電池蓋は工具か両手同時操作でないと開かない構造が必須、警告表示も必須で、メーカーはGCC(一般適合証明書)を発行する義務があります。そしてこのGCCも、2026年7月8日からのe-Filingの対象です。証明書情報が一致しない貨物は通関で止まる。

つまりこの規制の網は「おもちゃを避ければ大丈夫」という理解では避けきれません。キャラ物のタイマー、時計、LEDライト付きの雑貨。日本の中古キャラグッズにはボタン電池入りが山ほどあり、そのどれもが玩具と同じ網に掛かります。ついでに言うと、SpeedPAKの料金表はそもそも「電池を含む商品の発送は承りません」なので、ボタン電池入りの雑貨は証明書以前に配送サービスの規約側でもアウトでした。自分はこれを送ってから知りました。

他のセラーはどっちに出しているか

では実際のセラーはどうしているのか。eBayの公式Browse APIで、日本発の現役出品をジャンル別にサンプル集計してみました(2026年8月4日・各50件)。

検索ジャンルCollectibles側Toys側傾向
スケールフィギュア(anime scale figure)47件3件コレクティブル圧勝
ねんどろいど(nendoroid)31件19件割れている
ポケモンフィギュア(pokemon figure)29件19件割れている
ソフビ(sofubi soft vinyl figure)11件39件玩具側圧勝
ウルトラマンソフビ(ultraman sofubi bandai)6件44件玩具側圧勝

Collectibles側の主戦場は「Animation Art & Merchandise配下のOther Animation MerchandiseとFigures & Statues」、Toys側はほぼ一択で「Action Figures(261068)」でした。

読み解くとこうなります。

スケールフィギュアのセラーはすでにコレクティブル出品がほぼ標準。一方でソフビは8割が玩具カテゴリに出ています。ソフビはPVC+可塑剤で素材リスクを抱えているのに、売り方の面でも玩具側に寄っている。CPSC的には一番分の悪い組み合わせで、自分が移行期間に送って書面要求を食らったのがまさにソフビだったのは、偶然ではなかったのかもしれません。

ねんどろいどとポケモンが半々で割れているのも示唆的です。ここはセラーの判断でどちらにも置けるグレーゾーンで、言い換えると、カテゴリ選択という数少ない自衛手段を半分のセラーは使っていない。

配送の選び方まで分かれていた

カテゴリの次は配送です。両陣営から10件の出品詳細を取り、バイヤーに表示される配送サービス名を比べました。サンプルは小さいので傾向として読んでください。

  • Collectibles側のスケールフィギュア勢(5件):4件が「eBay SpeedPAK」を明示(Expedited $25〜40、またはEconomy送料無料)。高額品をSpeedPAKの追跡と補償に乗せる、真っ当な選択です
  • Toys側のソフビ勢(5件):SpeedPAK表記はゼロ。「Economy Shipping from outside US」(配達見込み2〜4週間=書留エアメールの匂い)か「Expedited Shipping from outside US」(自前のクーリエ契約らしき速さ)

つまりCPSC監視のど真ん中カテゴリ(Action Figures)に出しているセラーほど、CPaSSの申告導線に乗らない自前配送で送っている。意図的な回避なのか、単に安いからなのかは分かりません。ただ、郵便ルートも書類と無縁ではなくなっています。日本郵便経由のCPSC書類は「PGA Message Setをパウチで添付」という紙運用が既に案内されていて、米国宛DDP義務化も全キャリア対象。エアメールの力技が通る余地は、移行期間の緩さと同じで、いつまで残るか分からない類のものだと思います。

念のため書いておくと、Collectiblesに置けばCPSC判定を回避できるという話ではありません。判定は商品の実態とマーケティング全体で決まります。ただ、検査で開けられたときに「Toys & Hobbies > Action Figuresに出品された商品です」という事実は、大人コレクター品の主張と真正面から矛盾します。矛盾のない建付けを作る一部として、カテゴリは軽くない。

自分のチェックリスト

  1. 真正の子ども向け玩具は米国宛から外す。中古でCPCを取るのは現実的に無理
  2. 出すのは実態が大人コレクター品のものだけ。出品文にも "For adult collectors, not a toy" を書く(判定はマーケティング表示で決まるため、これ自体が防御になる)
  3. ソフビは素材リスク込みで一段厳しく見る
  4. 迷ったら、扱わない

移行期間の緩さを本執行後も続く常識だと思い込むのが、一番高くつきます。自分の実験は、たまたま期間内だったから商品もアカウントも無事でした。同じ行動のコストは、今は破棄=全損に変わっています。

免責:本記事は法的助言ではありません。執行運用は変動中です。出荷前にCPSC公式・配送業者の最新案内および専門家(通関業者・弁護士)で最終確認してください。